光を掴んだその先に。
遠慮なく入ってくる男。
爽やかに笑っている男。
ここは結構あぶない場所だから、見知らぬ人が入ったらどうなってしまうか分からないってのに。
下手したら侵入者と見なされてバーンって……。
「ちょっ、ここ旅館じゃないんですって!確かに私も最初そう思いましたけどっ!!」
「えー、水くさいこと言わないでよ。俺たちもう友達じゃーん」
「えっ、そうなの…!?いつの間に!?」
「友達ってのは気づいたらなってるものなんだよ」
……うん、こういうノリ嫌いじゃないぞ。
でも誰かの知り合いってことなのかな。
那岐と年齢も変わらないから、もしかして那岐の友達とか…?
「おい、んなとこで何してる」
「那岐っ!」
なんてときに現れてくれた那岐。
しかし「誰だそいつは」と続けられたため、知り合いではなさそうだった。
「…那…岐…」
新たな男はポツリとつぶやいて、一瞬険しい眼差しに変わったような気がしたけど…。
スッと、にこやかなものに戻る。
「つうかお前、特別講習はどうした」
「あ、え、思ったより早く終わったの…!ラッキーだよねぇっ、あははっ」
「…この野郎」
ソッコーバレた…。
ピリピリと空気感が変わった中でも、今はどうにもそれどころではないらしい。
那岐は初めての顔へ詰め寄って、言葉を放たず視線だけで相手を問い質す。
「そんな怖い顔しないでくださいよー。絃ちゃんを迷子から助けてあげたのに」
「名前は」
「天道(てんどう)です。あれぇ聞いてません?今日からここでお世話になるんですが」
天道…?
どこかで聞いたことあるような、無いような。
まぁ気のせいかな。