光を掴んだその先に。
「…お前が天道 陽太(てんどう ひなた)か」
「わぁ、知ってくれてるなんて光栄だ。俺も知ってますよ。…那岐 絃織さん」
天道 陽太。
どうにもこうにも、彼の就職先はここらしいのだ。
普通の大学生って感じだったのに極道のひとりなんだ…。
やっぱり人って見た目だけでは分からないなぁ…。
「今日から仲間入りとなった天道だ。奴はどうも優れたハッカーらしい」
そんな那岐の紹介に天道さんはヒラヒラと手を振って、「こんにちはー」なんて笑ってる。
上層部を前にしてこの軽々しさ……。
この人のメンタルの強さってたぶん凄まじいものだ。
それに優れたハッカーってなに…?
ハッキングしちゃうってこと?
回線カチャカチャ、みたいな…。
えええ…こっわぁ……。
「本当に広いんだねぇ天鬼組ってのは」
「…それにしても天道さん、どうして私の名前知ってたんですか?」
「絃ちゃん」
ほらそれ。
そうやって呼んでくる人なんか初めてだ。
それを聞いた俊吾なんかさっき、「お嬢が誰だか分かってんのかテメェ!」なんて怒ってたし…。
だとしてもニコニコ笑みを浮かべる男が天道 陽太だった。
「俺、堅苦しいの本当ダメ。敬語とか面倒じゃん?」
「でも天道さんのほうが年上だし…、」
「陽太でいいよ。その代わり俺も絃ちゃんって呼ばせて?」