光を掴んだその先に。
『いと、おいしい?』
『うんっ!なぎにもあげる!』
『…ううん、今日は絃がぜんぶ食べていいんだよ』
黒色をしたベンツ、後部座席に並んだ少年と少女。
運転する男は相変わらず変わったスーツを身にまとっている。
手に持ったカップアイス、付属されていた木製スプーンを使って夢中に運んでは口周りに付着するバニラを、隣の少年が拭ってあげる。
『パパ、どこいくの?』
妙な空気感に、重い雰囲気。
しかしそんなものをまだ感じ取れない2歳児は瞳を輝かせて、窓の外に広がる景色を見つめた。
『パパ』と呼ばれた運転席の男は答えない。
『なぎ、どこいくの?』
とくに気にしていない様子で、今度は隣の少年の腕をくいっと引いた。
『…お友達がたくさんいるところ』
『おともだち?』
『そう。これからはその子たちとお絵描きしたり砂遊びしたり……するんだよ』
震えてしまいそうな声を少年は必死に抑えた。
そのことに気付かない幼子は同い年の子供と遊んだ経験がないため、『おともだち』というワードに笑顔がぱあっと咲く。
『なぎもいっしょ?』
その質問には答えられなかった。
だからその代わり、小さな掌に握られていた木製スプーンとカップをひょいっと奪って、バニラアイスをすくう。
そして小さな唇へと持っていけば、パクっと食べた少女は頬を和らげた。