光を掴んだその先に。
『じゃあ、よろしく頼む』
『…はい。』
男と園長が瞳で会話をした。
そしてその眼差しは今度、少年へと移る。
わかってる。
離さなきゃいけない、そんなことは分かっている。
この子が16歳になるまで待てばいいだけだ。
『絃織、お前が離さないと絃が行けないだろう』
『…でも絃は…、赤ちゃんの頃から俺と離れたら泣いてたから…』
まだ言葉を話せないときからそうだった。
寝ている赤子からそっと離れただけで、察知したように泣いてしまうから。
お風呂だって、そんなの置いていけないからいつの間にか一緒に入ってた。
『…おやっさん、14年は……長いよ…、』
14年って、どれくらいだ。
きっと俺は今日だって、もうこの手を離した瞬間ですら絃に会いたくて触れたくてたまらなくなる。
だってずっと一緒だったんだよ。
“絃織。あなただけは…絶対にこの子の傍にいてあげてくれる…?”
約束したのに。
母さんにもそう言われて俺はうなずいた。
もちろんだって、当たり前じゃないかって。
それなのにどうして……。
『なぎ、いくよ?』
『…俺は、行かないんだ』
一緒に行くつもりだったのだろう。
だから絃も当たり前のように絃織の手をぎゅっと握っているのだ。