光を掴んだその先に。
『どうして?いけないの?』
行けないんじゃない。
行かないんだよ、俺は。
そう決めたんだ。
すると男は幼い2人の前にしゃがんだ。
『パパ…?』
『…おやっさん…、』
ぎゅっと、両手に抱きしめる。
その腕の震えは確かなものだった。
この人も本当はそんなことをしたくないと思っている。
そんなのは当たり前だ。
この人は何よりも優しい人だから。
ちょっとセンス悪いけど、でも、何よりも愛情深いひとだ。
『必ず、お前らはまた会える。絶対に会わせてやるからよ。…それだけはここに誓う』
ゆっくり身体を離して、絃織の手と絃の手を優しくほどく。
そしてひょいっと愛娘を抱き上げた父親。
『パパ?』
『…絃、俺はずっとお前のパパだぞ。離れても、ずっとだ』
その男の震える声に、思わず絃織の瞳は揺らいだ。
『パパ?なぎ…?』
そのまま園長へ受け渡されて、ガシャンと鉄で造られた柵が閉じられて。
その隙間から小さな手が伸びてくる。
ようやくここにきて異変に気付いた絃は、顔を歪ませて大きく泣いた。
『パパ…っ、なぎっ、なぎっ…!うわぁぁぁぁ…っ!ゃぁぁぁだぁぁぁっ…!!』
そのまま園長に抱かれるまま、遠退いてゆく。
思わずギリギリまで近づいて、ガシャンッと音を響かせてまでも少年は柵を掴んだ。
『絃……!!お友達、たくさん作れ…!好き嫌いせず、ちゃんと残さずご飯は食べるんだよ…!!』