光を掴んだその先に。




あぁ、もっと伝えたい言葉を考えておくべきだった。


いつも傍にいたから。
ぜったい俺が守るんだって思っていたから。

こうして離れるなんて想像もしていなくて。



『もし寂しくなったら歌をうたって…っ、ほら、赤とんぼ…!俺が毎日歌ってたことを思い出して…っ!!』



毎日、毎日。

夜泣きしたときは月を眺めて縁側で歌ってあげていた。

おやっさんがいなくても、母さんがいなくても寂しくないように。


俺がいるよ───って言い聞かせて。



『ぜったい迎えに来るから…!!俺が強くなって…どんなものからも絃を守れるようになって…!!
そしたら…っ、絶対ここに来るから…!!』


『なぎ…っ、うぁぁぁぁん…っ!!』


『それまで、ちょっと長いお留守番なだけだから…っ!』



お願いします神様。
絃を、絃を連れていかないで。

行かないで、ここにいて。

俺の光なんだ。


出会った瞬間から、たったひとつの光なんだ。



『だから俺のことを…っ、忘れないで……!!絃…っ!!』


『なぎっ!なぎ…っ、いとのこと、きらいなった…っ』


『ちがう…!!大好きだよ……!!絃…っ』



お前はね、捨てられたんじゃないんだよ。

俺たちは絃が大切で大好きだから、守るためにここに預けたんだ。


この場所でたくさんの友達を作って、優しい子に育って、そして迎えにきた俺に1回でも『行かない』って断れるような。


そんな子になっていてくれたら。



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