光を掴んだその先に。
『おやっさん、俺…強くなる。だから俺を……天鬼組に入れてください』
まだ少年は完全には一員ではなかった。
養子として、父親の親友の元に引き取られただけだった。
『…この世界は1度入れば抜け出せないぞ』
『はい』
『大切な何かが、そのせいで傷つくかもしれない。命の保証もされないんだ』
『…だからこそ、俺は強くなりたいんです』
少年が男になった日。
それは目の前の光を初めて失った日だった。
『まずは雑用からだ。文句があるなら辞めてくれて構わない』
そこから養子でも息子でもなく。
ひとりの男として、天鬼組の『那岐 絃織』になった。
雑用から始まって荷物持ち、そんな小さなものからコツコツと少年は積み重ねてゆく。
時には周りの男たちに殴られ蹴られ、無様な扱いを受けることもあった。
だとしても少年の揺るぎない覚悟は瞳にしっかり宿ったまま。
『お前を今日から俺の付き人にする』
そして少年が青年になり、15歳となった頃。
頭である天鬼 剣の付き人の1人に最年少の青年が任命された。
『けど俺はまだ車の運転ができませんが…』
『それ以外をやらせりゃいいだけだろう。だが使えなければ即座に外す。肝に銘じておけ』
『───はい』