光を掴んだその先に。
因果の先
「今日、施設に寄ってくれないか」
それは突然だった。
本当に突然、だから反射的にうなずいてしまうくらい突然。
まさかこの男から再び声をかけられる日がくるなんて、ずっとどんな顔をすればいいか迷っていたというのに。
「じゃあ帰り、待ってるから」
移動教室ですれ違った佳祐は、そのまま何事もなかったように反対方向へ歩いて行った。
途中で合流したクラスメイトにちょっかいを出されても軽くあしらって元通り。
すごくタイミングが良かったと思う。
今日はたまたま授業が午前中で終わる。
それを朝の時点ですっかり忘れていた私は、那岐にはいつもの時間にお迎えを頼んでいた。
「ごめんね那岐……今日だけ反抗期っ!」
ローファーに履き替えた私は、いつも車が停まる待ち合わせた場所から反対方向へ今日は向かう。
何事も無ければ「帰りが早まったよ」と、1本メールを送っていた。
それでも今日はそんなもの、しない。
「ごめん佳祐、ホームルームが少し長引いちゃって…」
「別に。…行くぞ」
「…うん」
本当は嘘なんかつきたくなかった。
なんて言ってるけど、少し前に特別授業だなんだ言って屋敷を抜け出した春休み。
どの口が言ってんだよ、と。
はい自分でも本当にそう思ってます。