光を掴んだその先に。
懐かしい通学路。
懐かしい商店街。
懐かしい公園に、懐かしいお店。
14年間は当たり前に通っていた道を“懐かしい”と感じるときがくるなんて。
「久しぶり」じゃなく「懐かしい」なのだ。
「…前、お前に嘘ついた」
会話はずっと無かったけど、ひと気のない公園を過ぎた辺りで話しかけられた。
思わず返事が出来ないまま顔だけ上げる。
少し先を歩く佳祐は、振り返らないで続けた。
「みんな寂しがってないって言ったけど、今でもハルなんかは寂しがってるよ」
ハル、とは私がずっと“ハルくん”と呼んでいた5歳の男の子だった。
甘えたがりで恥ずかしがり屋さんで、最初は溶け込めずにいた子。
私が14歳のときに園に入ってきた子で、優しく話しかけてあげたのを覚えている。
「ちょうど今日は保育園が休みなんだ。だから会ってやってくれないかなって。…それだけ」
「…ありがとう佳祐」
本当はひまわり園に行くなんて口実かなって疑ってしまっていた。
私はもうあの場所へは行けないと思っていたし、あんなことされたから。
だからそれについて私も聞きたい気持ちもあったけど。
それだけだと、彼は主張した。
「ヒューヒュー、兄ちゃん姉ちゃん、こんな昼間っから熱いねェ」
「おじさん達も混ぜてよぉ」