光を掴んだその先に。
那岐side




「昨日、このナンバー車は見なかったか」


「うーん…見てませんねぇ」


「なら左頬にナイフ痕のような傷がある男は」


「いやぁ、知らないなぁ」



目撃情報はこのあたりのはずだが、一向に進まない。

おやっさんに「話があるから近々時間を作れ」と言われていたが、それはもう少し先になりそうだ。


俺は今日もこうして車を走らせる。



「あいつらは確か…」



はあ、とため息を吐いた先。

運転席の窓から見えた見慣れた制服姿の2人がいた。


それは絃が友達だという女子生徒だったような気がする。

まだ普通なら授業中の時間帯のはずだが。



「…あの野郎」



明らかにあの様子では学校が早く終わったからと、ファーストフード店へ向かう平凡な学生だ。

思わず俺は車から降りて、うしろを追いかけるように店へ向かった。



「てかさぁ、引き取られたってことは一緒に住んでるってことよね?」


「そう、あのイケメン執事ふたりと。…羨ましすぎんのよ」


「ねぇ、ちなみに優花はどっちが好き?私は前のゆるふわパーマイケメン」


「あたしはどう考えても黒髪スーツイケメン───」


「おい」



フライドポテトを手にする女は振り返った。

その途端、椅子から転げ落ちるかのようにバランスを崩すものだから咄嗟に背中を支える。



< 188 / 349 >

この作品をシェア

pagetop