光を掴んだその先に。
連絡も寄越さない、施設に向かったはずがいない、佳祐と一緒。
ナメた真似しやがってあの野郎……。
「天道、すぐに絃の居場所をハッキングしろ」
『え?俺いま暇じゃな───』
「いいからしろっつってんだよ。あいつの電話番号から出来るか」
『はいはい、まったく強引な人なんだから絃織さんって』
そいつに電話をかけ、しばらく待つと再び着信音が鳴った。
ものの数分だった。
ハッキングが得意だとは耳に聞いていたが、そこまででは無いのだろうと思っていた俺が馬鹿だったらしい。
『あー、西海岸の第三倉庫にいるよ。桜木佳祐と…あとさー、』
なんでそんな場所にいるんだあの馬鹿は。
胸の中に生まれる苛立ちと、そして向かおうと車に乗り込む俺へ、スマホ越しに天道は続けた。
『桜木 勝(さくらぎ まさる)って男がいるね。調べたらすっごいエグい顔が出てきたんだけど』
「…さくらぎ…まさる…?」
『うん、ほっぺに傷がある男。絃織さん知り合い?』
質問には答えず、すぐに電話を切った。
ここにきて苗字だけでなく下の名前が揃うとは。
正直こいつに捜査の手助けをされるとは腑に落ちないが、あいつを殺すためならそんなプライドはどうでもいいものだ。
「…殺してやる。俺が、…今度こそ」
14年前のあの日、俺たちに悲しみの繋がりを与えた男。
この日がやっときた。
ずっと待っていたこのときが。
無力さ、綺麗事だけの御託では何ひとつ守れないと教えられたあの日。
おやっさんがあのときあの男を逃がした理由は、きっと今日のためだ。
俺がこうして自分の手でケリを付けさせるため。
「今の俺は石がナイフになるってことを知ったぜ、桜木」
───てめえを殺すナイフにな。
*