光を掴んだその先に。
「よう、佳祐。久しぶりだなァ」
そんなとき、どこから現れたのか不明な声に私たちの瞳は大きく見開いた。
クッチャクッチャとガムを噛む唇は紫色をしていて、その周りの無精髭が何とも背筋を凍らせる。
左頬にナイフ痕がある男───佳祐の父親だ。
そしてこいつは私のことも知っていた。
「桜木…!なんでここにっ」
「佳祐の女っつうのをゆっくり見たくてよ」
男は私に近づいてくる。
お父さんとあまり変わらない年齢の男だ。
私にとって、それは異性ではあるが男ではない。
しかしその男は私を女として見る瞳だった。
「息子の目の前でこの女を犯すと思うとたまらねェよなァ、佳祐」
「…なに…、言ってんだよ……、頭沸いてんのかお前……」
「そうそう、その目だよ佳祐。テメェのその顔が俺は大好きなんだ」
ヒヒッと、男は笑った。
やめて、来ないで。
触らないで……助けて那岐。
出さなきゃ、あの日みたいに。
スーーっと息を吸って、大声で呼ばなきゃ名前を。
こういうときに内なる絃は何してるの。
お休み中なの?火木土しか出ないとか?
なにそれシフト制なの?
「それによぉ、嬢ちゃん。ここの傷、」
「や…っ!」
黄ばんだ深爪が、煙草臭い指が、私の額に伸びてくる。
サラッと前髪を掻き上げて、3センチほどの線をなぞった。