光を掴んだその先に。
「これは俺が付けてやったんだ」
那岐が、あんなにも怒っていた理由。
拳を固く握り締めて唇を噛んで、瞳孔を開かせて、あんなにも車が去っていったあとを見つめていた理由が。
…これ、だったんだ……。
「な、那岐にも……あんたが…、つけたの…?」
「ナギ?…あぁ、あのガキか。そうそう、俺が力の差ってのを教えてやったんだよな」
そのとき那岐は何歳だったの。
私と那岐はまだ子供だったはずだ。
この傷は、私が施設に預けられた頃にはすでに付いていたって。
そうなると、この男は幼い2人に容赦なく傷を与えたってことだ。
「っ………桜木…、人間じゃないよ…、もう、そんなの人間じゃない…、」
「はははっ!!苦しいか?辛いか?あのガキもよ、なーんにもできねェの。
“やめてください”って土下座なんかしやがって」
わずか10歳にも満たない少年は、きっと私を必死に守ろうとしてくれていたんだ。
いつも私を守ろうとしてくれる彼だから。
大きな影に飲み込まれそうでも、大人たちに嗤われても、それでも必死に私の前に立ってくれていたはずだ。
「…やめ…ろ、───やめろ…っ!!」
「ッ…!なにしやがるテメェ!!」