光を掴んだその先に。
「待ってろ、てめえだけは時間かけてじっくり殺してやる」
彼がそう言うと、片眼の痛みに嘆く桜木は片膝を付いて呼吸を整え始めた。
那岐は私と佳祐を縛っていた縄を少々乱暴にほどき、じっと見つめる。
それは私ではなく、佳祐を。
「お前の父親を俺は殺す」
「っ、」
思わず息を飲んだのは、私だけじゃなく佳祐も。
ひとりの青年の父親を那岐は殺そうとしている。
しかし彼は息子へ許可を取ろうとしているわけでは無さそうだった。
それを実行すると、知らせただけ。
「絃を連れて逃げろ。お前は早く怪我の手当てをしたほうがいい」
「でも俺も…あの男を殴りたい…、」
「お前はもう十分やってくれた。あとは俺に任せとけ」
まるでそれは「守ってくれてありがとな」と、彼らしく伝えているみたいだった。
あのとき、私が初めて拐われそうになったときは佳祐の胸ぐらを掴んだというのに。
逆にこうして拐われてしまった今、那岐はそんなことをしなかった。
「俺がお前の分まであいつを殴る。だからお前は、絃を最後まで守り通してくれ」
「は、はい…っ」
そして今度、那岐は私を立たせてくれる。
震える瞳で見つめた私に微笑みが返された。
……と、思ったら。
「また嘘つきやがったなお前」
「え、あ、えっ、いや今回は本当に忘れててっ!!」
半日授業のことは本当の本当に忘れてたのに…!!
というより、今それ言う…!?
そのお説教ならあとで受けるから…!!
「怪我はしてねえか」
「あ、うん…、でも那岐っ、あの人が私たちの傷を…っ」
「大丈夫、俺はもう負けない」