光を掴んだその先に。
ぎゅっと、腕の中に閉じ込められた。
優しい力で私を抱きしめてくれる。
本当は気づいていた。
石が投げられる前に、那岐はここに来てくれてたってこと。
ふわっと広がる香水の匂いがすべてを教えてくれたんだよ。
「先に待ってろ。必ず迎えに戻る」
「ぜったい…ぜったい迎えにきてね…?忘れちゃだめだよ…?」
「当たり前だ。14年も待ったってのに、これ以上待てるか」
ゆっくり身体は離れる。
佳祐の体を支えながら倉庫を出ようとしたとき、ずっと静かだった男がパチンと指を鳴らした。
すると鉄パイプや金属バットを持った男たちが桜木の背後からぞろぞろと現れて。
「那岐…!」
「気にせず戻れ。これぐらいじゃねえと面白くないからな」
ちょうどいい───と、那岐は笑った。
那岐は、強い。
絶対に強い。
だってあんな大人数を前に笑える人なんか中々いないもん。
「それと絃。これは俺のケリだ、…組の奴らには言うんじゃねえぞ」
言うつもりはなかった。
私だって、これは那岐だけに決着を付けて欲しかったから。
「はっ、俺を殺したらテメェもサツ行きだぜ」
「お前は今までの度が過ぎた所業で署からも見放されてんだよ。
それに俺たちをナメるな。てめえなんざ国外追放することだって出来る」
「ッ…、クソガキが…!」
私は佳祐と共に走る。
そして倉庫を出たとき、今度振り返ったのは血だらけの佳祐だった。
「那岐さん…っ!!あの男は……俺の父親でも何でもないから…!!
俺はあんな男…、知らないから…っ!!」
「あぁ」と、返事が微かに聞こえた。
私たちは那岐を残して走った。