光を掴んだその先に。
口を尖らせて拗ねるように、佳祐はぷいっとそっぽを向いた。
すっごく痛々しいけど、これじゃあまた佳祐大好きガールたちに何か言われそうだけど…。
でも今日の佳祐は……、
「…うん、すっごく格好良かった。ありがとう佳祐」
「……別に」
「それにね、」
ちょいちょいと指で呼ぶ。
目を据わらせながらも言う通りにしてくれる佳祐がちょっとだけ可愛い。
その耳にコソッと伝えれば、照れくさそうに微笑んだ。
那岐はああ言ってたけど、前のときも私は同じことを思ったよ───って。
「那岐…!!」
時刻は17時を回っていた。
普通なら門限を過ぎているけれど、今日は特別。
何せ那岐もこの施設に居るから。
「おかえり那岐…!って、血だらけだよ…!」
「ほとんど俺のじゃねえが」
「うわぁ、でもここ切れてる…。待ってて!消毒液持ってくるっ」
灰色のYシャツはあまり目立つようには見えていないが、近づけば血の匂いがする。
ジャケットを腕に抱えながら姿を表した那岐の唇の横には血の塊があった。
さすがにあんな大人数だし、金属バットとか持ってたし……。
でもこれだけで済んだこの人の強さはすごいものだと思う。
「───佳祐。」
そして那岐は初めて本人の前でそう呼んだ。
一瞬だれのことを呼んでいるのか理解していない本人は、「え、俺…?」なんて不思議な反応。