光を掴んだその先に。




柔らかい感触はすぐに溶けてしまいそうで、だから「もうちょっと」なんて欲が出てしまいそうだった。

それでも彼もまた、ゆっくり重ねてゆっくり離す。



「───…もう消えてるよ。お前に出会ったときに、俺はぜんぶ消えてる」



那岐、那岐はもしかしたら私より泣き虫かもしれないね。


ただあなたは声を殺せてしまう人だから。

うしろから見れば到底泣いているなんて思えないくらいに。

でも私はいつも抱っこされながら、そんなあなたを下から見上げていたんだよ?


いつも泣いてたの、知ってる───…。



「あ、帰ってきたみたいですよー」


「那岐さんっ!!お嬢!!って、那岐さんその怪我どうしたんすか…!!」


「お前ら…、」



門の前には陽太と俊吾、そしてお父さんが立っていた。


どうやら私たちの帰りをずっと待っていてくれていたみたいで……。

さすがに連絡もなくて今だから当たり前だ。



「だから言ったのに。絃ちゃんは絃織さんが連れてくるって」


「テメェ天道…!!最初っから知ってたのか!?」


「うん。絃織さんからハッキングしろって頼まれたし」


「なんで言わねェんだよッ!!」



ガクガクと胸ぐらを揺らす俊吾へ「だって面白そうだったから」なんて、相変わらずな返答の陽太。



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