光を掴んだその先に。




「ふんふんふーん」


「なにか良いことでもあったの?絃ちゃん」


「ひみつー」


「ふーん、なるほどねぇ」



いつの間にか私の手にあったはずのパスケースは、そいつの元へと渡っていて。

……え?どういう超能力つかったの??



「返してっ!陽太!」


「これ絃織さんでしょ?それで赤ちゃんが絃ちゃん」



韻踏んでる…。
なんかもうラップみたいになってる…。

それはいつかに俊吾にも似たようなこと思ったっけ。


なぁんて、今はそれどころじゃなくてっ!



「…どうして後ろ姿だけで分かったの?」


「あー…うーん、勘ってヤツ?」



そうだ、この人ってハッカーらしいし侮れないんだった…。

もしかしたら私の個人情報とかもぜんぶ調べられてたりして……。



「…絃ちゃんさぁ…、絃織さんは無理じゃないかなぁ」


「無理って?」


「絃ちゃんはどう頑張っても無理じゃん」


「だからなんのこと?」



すると陽太は一歩私に詰め寄った。

耳元に唇を寄せて、くすっと笑う。



「…絃織さんのこと、好きなくせに」


「っ…!!え、えっ、なんで…!?」


「俺のハッキング力ナメない方がいいよー」



そのままヒラヒラと手を振って去っていった天才ハッカー。

どうやらこんなところまでハッキングしてくるなんて……。



「っ…、」



いつもなら「違うよ!」って言えるのに。

言えるのに、言えない。


それは私も否定ができそうにないからだった。



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