光を掴んだその先に。
「あっ、那───」
スッと、物陰に隠れてしまった。
それは湯上がり、いつものように那岐の部屋へお邪魔しようと向かっていたとき。
珍しく誰かと話している彼は、“那岐”と呼ぼうとした私の声には気付いていないようで。
「ずっと隠し通すつもりなの…?」
その声は雅美さん。
那岐と雅美さんが何か2人で話しているらしい。
……なんか、モヤモヤする。
「あの子はもう子供じゃないわ」
「…それは俺が一番知ってる」
「知ってない。知ってないわ、絃織ちゃんは何ひとつ」
なにを話してるんだろう…。
隠し通すって、なにを…?
誰の話をしてるのかも分からないし、そもそも喧嘩っぽい雰囲気だ。
「知らないから駄目なの。子供じゃないから駄目なのよ」
「姉さん、俺は───」
那岐の言葉が止まった。
そして私も思わず自分の口を両手で塞いでしまった。
なぜそんなことをしているのか、それはそうしなければ「あっ」と声を出してしまいそうだったから。
だって、片方は片方の腕の中に入っちゃったんだもん…。
「…どういうつもりだ」
「好きなの、…ずっと好きだった」
「…俺は姉さんからしたら弟みたいなものだろ」
「だったら…っ、だったら絃織ちゃんこそあの子は同じじゃないの…?」