光を掴んだその先に。
那岐へ身を寄せるように抱きつく雅美さんは、苦し紛れに声を発していた。
私にとって雅美さんは従姉妹で、母親のお友達だったと言っていて、いつも気さくに話しかけてくれる優しい女性。
それはもちろん私よりずっとずっと大人だから、那岐にとってもそういうものだとばかり思ってた。
「あなたのことをずっと見てた…。本当はいつも悔しかった、私は今も昔も悔しいわ」
彼女は震える声でつづける。
「いつも絃織ちゃんの一番になれなくて、くやしい…っ」
雅美さんと那岐には、私も入れない2人だけの空気感がいつもあって。
それは私がいなかった空白の14年に培ったものなのか、それともそれよりも前なのかも不明で。
悔しいって言うけど……雅美さん、私だって悔しい。
だってあなたは那岐の姿をずっと見ていたんだから。
私の知らない那岐をずっとずっと。
「…悪い、姉さん。俺は姉さんの気持ちには応えられない」
「…どうして、」
「すきな人が……いるんだ」
「どうして」と、私までもが思ってしまった。
那岐はそういう話は誰にも言わない人だと思ってた。
何よりそんな人もいないなんて、勝手に思ってた。
好きな人って…だれ…?