光を掴んだその先に。




那岐はどんな人を好きになるの?
その人はどんな人なの…?

いつ好きになったの…?


私も知ってる人……?



「ご、ごめんなさい絃織ちゃん、やだ私ったら何してるのかしら、」



雅美さんはその腕から逃れると、何事も無かったかのように笑った。

那岐も何ひとつ言わないまま、去ってゆく女を最後まで見届けて。


私はただそこに立ちすくんだまま。

どうしよう、とりあえず音もなく去ろうか。それとも那岐が去るまで待とうか……。



「───っくしゅっ…!!」



あ………終わった……。


湯冷めだ、完全に湯冷めした。
夏が近いからって夜風はまだ涼しいってのに。

ここは私も通りかかった人のふりでもしたほうがいいんじゃないか…。


ほら思い出せ、天馬くんのときを。



「お、おはよう!」


「夜だぞ」



……2回目の終わりが訪れました。



「…見てたのか」


「え?なんのこと?」



ありがとう陽太。

よく陽太が私に言うふざけた返しが、こういうときに上手く真似れたらしい。

腹立つくらいにすっとんきょうな顔をして、とぼけたように言えたはずだ。



「な、那岐は何してたの…?」


「…お月見」


「今日はお月さま出てないよ那岐」



ここで会話は終了だ。
そんなボケを言うなんて那岐らしくない。

……そんなに動揺してるってことなのかな。



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