光を掴んだその先に。




「だ、だめだよ…」



やめとけ私。

もう本当に、なにも言うな私。



「だめ、絶対だめ、だめだめ…!!まだ那岐には早いよそーいうのは…!!」



だめだ、考えれば考えるほどに頭の中に今さっきの情景がリピート再生。

高速で再生してくる、なんだこれ。

そんなものは今すぐに停止したいのに…!!



「だめだよ…!那岐は、那岐だから、誰かのものになったりしたら…だめ…っ」



気付けばその袖をぎゅっと掴んで、訴えるように言ってしまって。

そのまま勢いで抱きついちゃったりなんかしちゃって。


ふわっと香る那岐の香水だけじゃない彼女のものに、もっとモヤモヤが止まらない&リピート再生という地獄。



「雅美さんは陽太が狙ってるんだって…!だから、那岐はそんなことしなくていいのっ」



好きな人って誰……?

ここにいる人…?


雅美さんに抱きしめられたとき、どうしてすぐに離さなかったの…?

たとえ腕を回してなくったって、断らなかったら受け入れたって見えちゃうんだよ…。



「なら…、お前を狙うのは駄目か」


「っ…、」



一瞬、息が止まった。

だって那岐のそんなにも苦しそうで消えそうな声なんか初めて聞いたから。



「…なんてな」



雅美さんと違ったのは、私の背中には那岐の腕がしっかりと回っていること。


跳ねる心臓の音が聞こえてしまわないように必死だ、今も。

でもその音は…私だけの音じゃない。



「那岐……誰かに見られちゃう…」


「…見られたら駄目なのか」


「…ううん、だめじゃない…、」



この混ざった他の香水の匂いを、ぜんぶ私の匂いで消せたらいいのに。


やっと分かったよ。

ううん、本当はもっともっと前からちょっとずつ生まれてた。



私……この人が、好き。


那岐が───…好きだ。








< 219 / 349 >

この作品をシェア

pagetop