光を掴んだその先に。
那岐side




言葉してしまったら駄目だと思っていた。

言葉にするということは、具現化されてしまうことでもある。


そしてそれは俺に紛れもない答えと真実を与えてくるから。



「お前…誰にでもこういうことしてんのか」


「え…?」


「…佳祐にも、天道にも」


「しっ、してない…!那岐にしか…しないよ…」



ほら、俺はこうして言葉を求めて答えを求める。


こいつが俺に向ける想いの正体を玉ねぎの皮を剥がすように暴いていったとしたら。

俺はきっとすべて剥がし終わる前に手を止めるだろう。


だって俺は、それを知ったらたぶん駄目だ。


止まれなくなる。

お前にとって兄のような、そんな生ぬるく優しいものではなくなるから。



「あ、でも佳祐には……たまに抱きしめたりはしてたかも…」


「ふざけんな」


「いやっ、小さいときの名残っていうか…っ、ほら那岐が私にしてくれるものと…たぶん同じ…」



だったらそれはもっとふざけんなっつう話だ。

こんなの口実でしかない。
俺はお前を赤ん坊だなんて見ていない。


もっと汚いものだ。

今はもう、その光を汚してしまいそうで、いつか壊してしまいそうで怯えてる。


それは幼いころ怯えていた恐怖とはまた少し違ったもので。



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