光を掴んだその先に。




違うよ、おじいちゃん。
そんなの冗談だよ。

だから早く屋敷に戻ってきて。

おじいちゃんがこんな病院で大人しく横になってるなんておかしいよ……。



「おじいちゃんは重い病気なの…?」


「肝臓に腫瘍があるらしい」


「腫瘍!?し、死んじゃうの…?」


「手術で半分取り除けば平気だ」



淡々と説明する那岐は、どこか遠くを見つめていた。


きっとお酒や煙草ばっかしてるから身体にガタがきちゃったんだよ、絶対そうだ。

それに肝臓って取り除けるの…。
半分ってなに…。

うぅ、そういう話は苦手だ。



「那岐はアクセサリーとかしないの…?」



なんでもよかった。


彼の口から縁談の話が出るくらいならば、私もそんなものを聞かなければいけない空気感になるくらいならば。

会話なんかなんでも良かったから、たまたま目に入ったものを出しただけ。



「ピアスとか…」


「しねえな。…昔、そういうの付けてる男を見て泣いてた赤ん坊がいてよ」



あ、それぜったい私だ。

私じゃなかったら誰の話してるのってなるもん。



「だから俺はそいつが泣くことは絶対にしない。…って、決めてる」



ぜんぶぜんぶ、いつかの赤ちゃんのためなのだろう。


この人はどうしてこんなにも優しいの。

どうして私のためにそこまでたくさんのことを我慢できるの…?



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