光を掴んだその先に。




「もう馬鹿でいいよ…!!今ここに欲しいの冒険の書っ!!」


「そもそも冒険すらしてないじゃん。てか、なにをそんなにセーブしたいのさ」



セーブ……。

私たちにはどうしたって昔の記憶が目の前にあって、私たちの間にもあって。

それがあるから私と那岐の関係は成り立っている。


けど、こうして今をセーブしたがっている私は何がしたいんだろうって。


私は今までたくさん那岐に我慢させてきたのに、これ以上追加させようとしてる…?



「……そうだ。」



陽太、言った。

たった今、すごいこと言ってくれた。



「陽太っ!!ありがとう陽太!!」


「は?」


「私、まだ冒険すらしてないっ!!」


「…うわすっごいポジティブ。絃ちゃんのそういうとこ、俺だいきらい」



そうだよ冒険してない。
まだ私は何もしてない。

するする言って装備を身に付けて薬草をたくさん買って、じっと座ってるだけだ。


これは有言不実行、つまり“するする詐欺”という。



「とは言ったものの……」



何から始めていいのか分からない。


那岐の悲しみを、辛さを取り除く冒険のルートはどこにあるの。

そしてそこにいる竜王はなんだ、誰だ。



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