光を掴んだその先に。
「まずは腹が減っては戦はできぬっ!」
冒険の始め方、その1。
まずは誰もいない台所をマークする。
その2。
安全を確保したら冷蔵庫という宝箱を開け、冷凍室を漁る。
その3。
必ず1つはあるバニラアイスを手にする。
その4。
溶かさぬよう縁側へダッシュ。
「おいしっ!」
そう、この感じがたまらないのだよワトソン君。
誰にも見つからずに食べる背徳感と罪悪感。
ジリジリと太陽が焦がす暑さなら尚更最高ってね。
「腹こわすぞ」
「那岐っ!」
「おまえ昨日も食ってたろ」
こわさないよ、もう17歳だもん。
そんないつまでも赤ちゃんだと思われたらたまったもんじゃない。
「今日は機嫌いいな。…あぁ、アイス独り占めできてるからか?」
「那岐も食べる?一口500円だよ」
「馬鹿高ぇわ」
原価より高ぇだろ───と、微笑んだ男は隣に座った。
これはたぶん、そういうことだ。
このアイスだって買っておいてくれたのは、いま隣にいる人。
だからそんなにも優しい顔をしているんだ。
もう分かっちゃうよ、そんなの。
でも知らないふり。
「一口500円だとしたら、これぜんぶあげたら5000円近くは儲かっちゃうねぇ」