光を掴んだその先に。
「今日ぐらい暑い日にね、こうして縁側でひとつのカップアイスを手にして」
那岐が持ってて、私は早く早くと瞳をキラキラさせて口を開いて待ってた。
その木製スプーンにすくい上げられるひとつにとつの動作に期待は高まって。
早く口の中に溶ける冷たさと甘さを知ってみたくて。
「…そのあとも、覚えてるか」
「そのあと…?…うーん、忘れちゃった」
「…そうか」
そのアイスは今日みたいに秘密に食べていたのか、それとも誰かに渡されたのか分からない。
けど、アイスを口にする幼い那岐の微笑みは今あるものと何にも変わっていなくて。
「あのとき、お前も俺も確か初めて食べたんだ。んで、うまかったからお前はくれくれってせがんできて」
「うん、那岐ばっかり食べてたような気がする」
「…お前はまだ2歳だったし、腹こわすからあまりあげるなって言われてたんだよ」
そっと私の頬に伸ばされる手。
じっと見上げれば、同じように見つめてくる。
「…そのあと、忘れてんじゃねえよ馬鹿」
「ご、ごめん…、でもたぶんまたどこかで思い出すと思うから…」
拗ねるようにつぶやいた那岐。
そのあと、なにがあったの…?
「ぜったい思い出せ。…じゃねえと無理やりにでも思い出させるぞ」
「……え。」
「忘れた記憶は強くぶつけると思い出すって聞いたことがある」