光を掴んだその先に。
いやいやいやっ!!
そんなの絶対しちゃいけないよ…!!
頭は何よりも守らなきゃいけない場所なんだよ!?
「那岐、自転車乗るときにヘルメット被る理由しってる…?」
「熱中症対策だろ」
「んなわけあるかっ!」
ほらもう、こういうところ。
意地悪に笑ってからかって、満足そうにえくぼを見せてくれる。
好きだなぁ……。
「───絃織さん。」
その声は高くて、花のように綺麗で。
那岐を下の名前で呼ぶ人なんか限られちゃうからこそ珍しくて。
いつもなら誰が呼んだか分かってしまうのに、今回は慣れない音に反応ができなかった。
「今日からお世話になります。…絃さんも」
今日からお世話…?
私、なにかお世話することあったっけ……。
どちらかというとお世話されるほうなのに。
縁側の先、屋敷の門から続く庭に姿を現した清楚なワンピース姿の女の子。
緩やかなウェーブがかったボブほどの長さの髪をハーフアップにまとめて、唇と頬はほんのりと赤い。
「…明日じゃなかったのか」
「1日早めてもらったんです。…絃織さんに会いたくて」
どうやら始まったばかりの冒険の旅は、ここで終わりを告げるかもしれない。
それか、この子がラスボス…?
開始からほんのわずかでボスが現れちゃった…?
「…竜王……きちゃった…」
もしくは私は冒険の始め方を、最初から間違えていたのかもしれない。