光を掴んだその先に。
夏休み期間限定でこの場所に暮らすことになった桜子ちゃん。
彼女にも一人部屋が与えられて、しかし那岐からいちばん近い部屋。
そんな私にとって地獄のような生活は始まってしまったわけなんだけど…。
「だから泡が多いっつってんだろ」
「……ちゃんとやったもん」
「どうだかな」
はいそうですよー。
すっごいかき混ぜちゃいましたよーだ。
そもそもどうして那岐の隣に当たり前のように彼女も座ってるの。
ここは私と那岐の2人だけの授業のはずなのに。
「ふふ、絃ちゃんはいつもこんな感じなんですか?」
「…まぁ最初よりはこれでも上手くなったが」
「よかったら私も教えましょうか」
「あぁ、頼む」
こんなのを目の前にして力を入れないほうがおかしい。
すっごい気合い入れてお茶を立ててあげた。それはもうそこにすべてを闘魂注入するように。
「なぁんで受けたのっ!?」
「気づいたらこうなってたんだよ」
パシッ!パシッ───!
道場に響く音。
「那岐のバカっ!かわいいからって鼻の下伸ばしてさっ!!」
「俺がいつそんな顔したんだ」
「常にっ!!あ、ほら今も!!ブサイク…!!」
「……俺をブサイクっつったら他は宇宙人だろ」
「えっ、なにそれ自覚してんの!?うわムカつく!!」
攻めて攻めて攻める。
間合いなく竹刀で飛び込んだとしても、すべて受け流されてしまうけど…。
こういう場でしか責められないんだから許されるはずだ。