光を掴んだその先に。




「うっわー暗くない?」


「…暑いから」


「うっそだ~。絃ちゃんから醸し出てる空気がもう闇オーラすごいもん、なにこれ」



てかこのひと、なに勝手に人の部屋に入って来てんの。

当たり前に入ってきてテレビまで付けてるし。


“安心安全家電はたっかやなぎ~♪”


───バチッ!



「あ、なにすんのさ。このあとやるドラマ見たいのに」


「自分の部屋で見ればっ!」



怒ったって怯みもしないそいつ。

私の数学のノートをペラペラ見ては、「うわ、落書きだらけ」なんて言って笑ってる天道 陽太。



「だから言ったじゃん。絃織さんは絃ちゃんだけは無理だって」


「そんなの…わからないじゃん…」


「いーや、これだけは確実」



なんでみんなそんなにいじわる言ってくるの…。ここにいるみんな意地悪だ。

そりゃあ桜子ちゃんは才色兼備で、私がすっぽんなら彼女は月だよ?


でも私だって那岐におでこにチュってされたり、たくさん抱きしめられてる。


え、ってことは……。



「……ねぇ陽太。婚約者って……き、キスとかするの…?」


「あったりまえだのクラッカー」


「抱きしめたりは…?」


「そんなの序の口でしょ」



大きなたらいが頭の上にゴーンっと降ってきた。


そりゃするよね、だってカップルみたいなものだし…。

那岐と桜子ちゃんがそういうこと…するの…。



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