光を掴んだその先に。




「那岐さん…、あいつら変に動き始めたみたいなんです。前もうちの組員が襲われてます」


「俺もそれは聞いてる。親玉を探してるが…どうにもすばしっこい奴でよ」


「きっと組長がいない今を狙ってるんです。下手したら、ここを潰す気っす」



いてて、と歪ませた俊吾の右肩の包帯には血がじわっと滲み出てしまっていた。

きっとまだ応急措置程度にしかしていないから、ちゃんと止血できてないのだ。



「俊吾脱いでっ!傷の手当てするから…!」


「いけませんお嬢…!オレなら平気っす!」


「いいから脱げっ!!脱がされたいの!?」


「す、すみません!!脱ぎますっ!!」



だいぶ扱い方が分かってきた私。

血だらけのアロハシャツを俊吾は痛みに耐えながらも脱ぐ───が。



「ぅぁぁっ!なにこれっ!えっ、刺青!?」


「そうっす鯉っす!イカしてるでしょう!」


「彫ってるの…!?肌彫っちゃったの!?怖すぎるよ……!!うわぁっ、やだ近づいてこな───わっ!!」



そんな私の手をぐいっと引いた男がいた。


灰色のワイシャツ、腕捲りする人。

普段スーツに隠れている白い肌が見え、スッと通った筋は男の人の証。



「な、那岐…?」



腕を勢いよく引かれたと思ったら、なぜか抱き上げられているらしい。

え、抱っこ…されてる……?



「見なければ怖くない。あんなのシールだと思えばいいんだ」


「シール…って、」


「あぁ、ペタペタ貼ってるだけだあんなモン」



優しい声だ。

どうしてか私も恥ずかしいと騒ぐ気にもなれなくて、心地が良くて。


ポンポンと優しく背中を叩かれる。

幼子をあやすような、まるで当たり前の一環として行われたものに誰もが目を丸くさせていた。



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