光を掴んだその先に。
「自分でしろ」
そんな私と同じ言葉を言った那岐。
でも逆にそれはそれで可哀想になっちゃうのが私の性格なので。
「やってあげて那岐!女の子はちょっとやそっとのことで骨が折れちゃうんだよっ」
いつもの調子に戻るのは得意だった。
それだけは本当に得意。
顔をコロっと変えて、腹立つくらいに気にしてない素振りをすることだけは。
「あっ、それなら私は救急セット持って───」
「いえ、大丈夫です。そういえば天道さんが絃ちゃんを呼んでましたよ」
なんて扱いはどこもおかしくない。
うん、そうだ。
その通りだ。
だってこのふたりは婚約者だから。
「それで大人しく戻ってきたってわけね。俺べつに呼んでないし」
「…くっそぅ」
「いやぁ無様だねぇ」
「うるさいよっ!」
だってあんなこと言われちゃったら「いえ、持ってきます」なんて言えないもん…。
どんだけ恩着せがましいのって。
どんなに陽太に笑われたって、私の中には那岐の言葉がずっと残っていた。
『あの頃の俺たちはもうどこにもいない』
『だからいい加減俺を見ろ、…いまの俺を』
見てる、見たい。
私だって今の那岐を見たいし、いまの私を見てほしい。
「あ、そういえば陽太。数日間くらい留守だったけど、どこ行ってたの?」
「…どんなに友達でもプライベートはあるんだよ絃ちゃん」
「う、それは確かに…。ごめん…」