光を掴んだその先に。




「私ほんとに……なんにもできない…、」



いつもいつもしてもらってるばかりだ。


世の中にはたくさん苦しんでいる子がいる、それは知っている。

その子たち1人1人を全員救うなんてそんなの無理で、それはかえって偽善にしかならない。

そんなのは無理な話だ。



「あ、そういえば今月末お祭りがあるんだって」


「そうなの…?ぜんぜん知らなかった」


「俺と行かない?そのお祭り」



でもここに、こんな近くに地獄のような苦しみを味わった子がいるというのに。

私はこんなにも隣にいて何ひとつできない。

那岐のことだってそうだ。


それが悔しくてたまらない。



「…雅美さんを狙ってるんじゃないの」


「だってあの人、絃織さんしか見てないし飽きちゃったー」



う…、やっぱりそうなんだ…。

敵は雅美さんと桜子ちゃんだなんて強すぎる。



「…てかさ陽太、彼女いるよね?」


「え?なんのこと?」


「いやいるでしょっ!なんてヤツなのっ!」



お祭りかぁ…。

どうせ行くとしても結局は護衛が付くだろうから、陽太と行っても行かなくても変わらないか…。


うーん、でも陽太かぁ……。



「絃織さんじゃなくて悪かったね」


「えっ!?心読んだ…!?」


「ハッカーナメないでくれる」



那岐は行くとしたら桜子ちゃんとだろうし、絶対そうだろうし。

浴衣姿似合っちゃうだろうし、そしたら町の子にもキャーキャー言われるだろうし…。


それで明莉や優花と鉢合わせたら私もすっごい面倒だし…。



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