光を掴んだその先に。
仕方ない、陽太とだけど行ってやるか…。
かき氷とイカ焼きぐらいは奢ってもらおう。
いや、ぜんぶ奢ってもらお。
「あ、ちょっと待って」
私が準備万端になれば、今度は陽太がスマホを取り出して操作し出した。
タイミングわるぅ…。
それになんか時間かかりそうな空気だし…。
「ごめん絃ちゃん。俺ちょっと一瞬電話してくる」
「え、結構かかる?もー、せっかく準備したのにっ!」
「まぁまぁ、これでも観てなさいよ」
ポンポンと肩を叩かれ、気づけば手にはあるものが持たされていた。
別に忘れていたわけじゃない。
観たいと私も思っていたし、もっとゆっくり観るつもりだった。
「……」
でもそうやって構えるほうが逆に勇気を失くしていって。
もしかしたらこういうノリでサラッと観たほうがいいのかもしれない。
「えーっと、電源は……あったあった」
片手で持てる大きさのビデオカメラ。
やっぱりわりと年代物だから読み込みが長い。でも一応まだ現役みたいで。
「わ、動画少ない…。え、これ使ってなかったの…?」
その中に保存されている動画は2つしかなかった。
これはもう今日のこの時間に見れちゃいそうだ。
「とりあえず30秒の方から観よっと」
30秒と、1分半の長さのもの。
サムネイルはどれも景色だった。
見慣れたその景色は、この屋敷の中庭に似ている気がする。