光を掴んだその先に。
ピッと再生。
そこはまた中庭を映した場面から始まって、しかし彼女はもう使い方に慣れたのか迷う動きはしていない。
“美鶴ー?”
“はぁ、お婆様だ。…無視無視っ”
やっぱりお母さんだ。
彼女は天鬼 美鶴で間違いない。
“そんなところで何してるの?”
“あっ絃織!ちょうどいいところに来た!ほら喋って!”
───…那岐だ。
那岐が、動いてる。
パスケースに入った少年が、静止画でしか見れなかった少年が、カメラのレンズを不思議そうに見つめていた。
「わぁ、那岐がちっちゃい…」
お母さんと那岐もやっぱり知り合いだったんだ…。
そりゃそうか。
お父さんが6歳の那岐を助けて、この場所に連れて来たならば当たり前だ。
“喋るってなにを?”
“なんでもいいから!じゃあほら!生まれてくる赤ちゃんに向けてメッセージとかっ!”
”メッセージ…急に言われても”
すっごく那岐っぽい。
こんな高い声をしていたんだ。
記憶の中のものより、また少し高い声。
その生まれてくる赤ちゃんは私だ。
“お兄ちゃんなんだから、妹に何かあるでしょー?”
「………え………?」
少年は照れくさそうに微笑む。
喉を鳴らして整えて、再びレンズを見つめた。
その先の私を───見つめた。
“元気に生まれてきてね。僕、早く君に会いたいから。…お兄ちゃんとたくさん遊ぼうね”
“ふふっ、これいつか見直したら感動するだろうなぁ…”