光を掴んだその先に。




「え、絃ちゃん…?ちょっとどこ行くの?どうしちゃったんだってば!」



どうもしないよ。
ただバカな期待をしていただけだよ。

ごめん那岐、本当にごめんね。

私、那岐の背負った過去よりも、この現実のほうが辛くて苦しくて、痛い。


すっごくいたい───…。



「絃ちゃんって!なに、どういうこと!?」


「……竜王は……、桜子ちゃんじゃなかった……」



特別なんかじゃないじゃん。
ぜんぜん特別なんかじゃない。

だってその“特別”は、ぜんぜん嬉しくないものだ。


守るって、兄として妹を守ってただけだ。



『迎えに来るのが遅くなって…すまなかった』


『守る。俺が、…絶対にお前を守る。───……今度こそ』


『お前は俺の光だ。光なんだ、出会った頃からずっと───…』



言葉は温かくて、言葉は優しくて。

言葉は嬉しいもので。



『ガキじゃねえし、でもぜんぜん変わんねえし……どう接すりゃいいんだよ…』



そして言葉は、残酷なくらいに冷たい。


すべてをひっくり返すことだってできちゃう。

優しさがナイフに変わって、幸せが棘に変わって。



『あの人の愛は本物っす』


『ずっと隠し通すつもりなの…?』


『…だから言ったじゃん。絃織さんと絃ちゃんだけは無理だって』



くるしい───…。

この苦しみは、とっても嫌なものだ。


竜王は、強すぎる。
私じゃ到底敵わないくらいに…強い。



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