光を掴んだその先に。
痛いのは───…心だ。
胸が痛くて痛くてたまらない。
「泣くな絃。大丈夫だ、俺がいる」
赤ちゃんの頃以来だ、きっと。
私がこんなにも涙を流していることは。
だっていつも泣かなかった。
泣きたくても我慢してた。
昔は私が必ず泣いている側だったから、極力泣かないようにしていた。
もう子供じゃないよって、いつも示すために。
「絃織さん…、もしかしてさっき言ってた子って…」
震える声で那岐を見つめたのは桜子ちゃんだった。
ごめん、ごめんね桜子ちゃん。
でも私たちは何もないから。
本当に何もないんだよ。
だからそんな目で見つめる必要なんかないのに。
「…あぁ、こいつだよ」
なんの話かは分からない。
けれどまっすぐ彼女へ向けた那岐の腕は、強く強く私を掴んでいた。
「ちょっと絃織さん、どういうこと?」
「天道、今日のことは誰にも言うな。周りには絃が熱出したから俺が看病してると伝えろ」
「え、ちょっ!絃織さんって!」
ひょいっと私を抱え、そのまま離れへと進んで行く那岐。
陽太の戸惑う声なんか聞こえないくらい、その腕はしっかり抱えてくれるから。
ぎゅっと抱きしめてくれるから。
「ええ、なに、本当にパパなの?」
「どう考えても違ぇだろ」
その熱は昔と違う。
でも、おんなじだ。
同じなんだ───…。
そんなものに、また痛みが追加された。
*