光を掴んだその先に。




「…いや、…だ」



ぜんぶ嫌だ。

那岐のことを好きになってしまった私も嫌で、何ひとつ知らされなかったことも嫌。


もし最初から知ってたら那岐のことは好きにならなかったのに。

なんて、そんなはずないって思っちゃうのも嫌だ。



「雅美さんに抱きつかれてたのも、いやだ……」



目の前の瞳は微かに開かれた。


言ってはいけないって分かってるのに、これは私が一番言っちゃだめな台詞なのに。

止まらない、止まりそうにない。


壊れてしまう。

この人が今まで大切に重ねてきたものを、私は壊してしまう───…。



「桜子ちゃんとキスしてたのもいやだ……っ、私には普通に触ってくるところも、嫌だ…っ」



私が抱き付けば、当たり前のように背中に回してくれて。

私には意地悪な顔を見せてくれて。

肉まんを半分こしてくれて、アイスだって1つのスプーンで間接キス。


普通だったらそれを許してくれるような人じゃないから。

だからこそ、私は妹だと言われてるみたいで嫌だ。




「───…いもうと……やだぁ……っ、」




とうとう出てしまったらしい。


妹なんか嫌だ、那岐がお兄ちゃんなんか嫌だ。

赤ちゃんなんか嫌だ。
昔の思い出話は楽しいし幸せだよ。

けどそれが、いまは嫌だ。



「壊れるのも、いやだ、こわしたくない……、那岐との今の関係が壊れるのもいや…っ」



欲しがりだ、私は。

あれも欲しい、これも欲しい。



< 279 / 349 >

この作品をシェア

pagetop