光を掴んだその先に。
2人きりの時間
物事はスピードが大切って聞いたことがありまして。
なんていうか勢いっていうのかな、そういうのもたまには大切だって。
「えっと、今日は委員会があって終わるの17時前だから…」
「了解」
やっぱりBGMはいると思う。
いや絶対にいる。
なんでないの、なんでもいいからFM流してお願い。
赤信号、余計に静かな車内でウインカーの音を数えている私に、スッと腕が伸びてきた。
「っ…、」
右手はハンドルを軽く握り、引き寄せた左手の動きに合わせるように唇が重ねられる。
「っん、」
ちゅっと離れ、追いかけるようにもう1度優しく重ねてきた。
そしてゆっくり離れる。
「…今日も頑張れっつう、応援的な」
「……は、はい、」
逆に頑張れない。
こんなの頑張れるわけがない。
身体は硬直、パチパチと瞬きを繰り返す私を乗せた車は発進。
夏休みが終わって、2学期が始まった。
那岐の縁談は破談となって、「那岐さんが振られたらしい」なんて噂もやっと落ち着いてきたこの頃。
「だぁぁぁめぇぇぇぇだぁぁぁぁ」
久しぶりだ、屋上から叫ぶことは。
こうして気持ちを思いっきり発散したいときは毎度毎度お世話になってた山びこさん。
「「うるさぁぁぁぁい!!!!」」
そして内容も内容か、前より気迫の凄まじい反響が約2名から返ってくる。