光を掴んだその先に。
「那岐っ!」
「おう、お疲れ」
格好いい。
あぁもう……格好いい。
校門の向かい側、目立つようにはしていないのにやっぱり目立ってしまうベンツが1台。
そこに寄りかかるようにしているだけなのに、ほらもう一瞬にして注目の的だ。
「テストね、ぜんぶ50点以上だったよっ!最高が92点!」
「すげえ、頑張った甲斐があったな」
「うんっ」
休み明けのテストで補習が免れたのも、それもこれも顔が良ければ頭も良い那岐のおかげだった。
テスト勉強に夜遅くまで付き合ってくれて、おまけの甘い時間がご褒美。
そんな夢のようなテスト対策の成果は、きちんと結果として出てくれたらしい。
「テストも終わったし、どこか寄りたいとこあるか?」
「え、でも門限…」
「あれは俺が勝手に決めてるだけだ。それに一緒なんだし、問題ない」
運転席の男は柔らかい顔で私の返事を待っていた。
どうしよう、これってデートのお誘いが出来るんじゃないの…?
こういうのずっとずっと憧れてた。
放課後にお出かけってやつ。
でもあらかさま過ぎて見破られるのも恥ずかしいし、都合の良い理由として……。
「す、数学の参考書っ!買っておけって先生から言われてて、」
「なら本屋か」
「あのねっ、新しくできたショッピングモールの本屋さんにしか売ってないみたいで…!」