光を掴んだその先に。




もちろんそんなわけがなく。

どこの本屋さんにも売っている、ありふれた参考書。

それに明莉や優花に借りれば問題もないし、ただ私が行きたかっただけ。


那岐と行きたかっただけ。



「んじゃ、そこ行くか」


「えっ、いいの!?」


「そこにしか売ってねえんだろ」


「あ、……うん」



罪悪感だ。
本当にごめんなさいって感じだ。

それでもぜんぶ分かっているような微笑みに助けられてしまう。



「わぁ!ライトアップ綺麗っ!」


「相変わらずでけえな」


「那岐、ここ来たことあるの…?」


「あぁ、仕事で1回」



たくさんのお店が入っているショッピングモールは、この街で有名なデートスポットでもあるらしい。

週末の放課後、この時間帯はカップルや学生で溢れていた。


そんな場所にスーツ姿の那岐が歩けば、もちろん周りの視線は一気に彼へと向かってしまう。



「ねぇ、あのひと格好よくない!?」


「大人~!やっぱり年上いいなぁ~」


「隣の子って高校生だよね?彼女かな?」


「いやいや妹でしょ。でもスーツと制服って憧れる~」



残念でした~。
彼女でも妹でもないですよーだっ。

……って思ったら、ただの知り合いじゃんって悲しくなりました天鬼 絃でした。



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