光を掴んだその先に。




明日はカレーだったのかなぁ。

買い物袋から地面に転がった玉ねぎに人参、じゃがいも。


コロコロ転がった野菜たちが妙に寂しく見えた。



「天道さんに連絡しねェと。これでやっと頂点の座は龍牙組のモンだ」


「まさかこんな早くに手柄が取れるなんてな」



掴まれた手首がこの上なく気持ち悪い。

肩を組むように触れられる動きは、どこか身体つきを確認するかのよう。


ニタニタと金歯の光る前歯に、煙たい香り。



「…け、…て……」


「あ?なにか言ったか嬢ちゃん」



気持ち悪い、怖い…助けて。

本当はこんな思いしたくない。
どこに連れられてしまうの。

私は普通に生きていたはずだ。


ごく普通の高校生だったはずなのに、“ごく普通”が“極道普通“になった……。



「…はは、ぜんぜん面白くない」


「ん?なんだ?」



こんなの、───あんまりだ。



「……助けて……っ!!」



叫べ。

なんでもいいから叫べ、私。



「天鬼組の大事な孫娘だよ私っ!!なにしてんの天鬼組!!
トップじゃないの!?もはやトップってなに!?そんな簡単にトップとか名乗るなっての…!!
守れっ、私を守れぇぇーーー!!!」



すうっと勢いよく酸素を取り入れて、勢いよく吐いて出したマシンガンのような愚痴。



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