光を掴んだその先に。




「おい絃織、俺もやっぱり倉庫へ向かう」


「駄目です。…倉庫が囮だったらどうするんですか」


「だが向こうで片がつかなかったら、ここにも乗り込んでくる。絃がもっと危険になるだろ」


「そのときは俺が命に代えても守ります」



陽太、どうして私に極秘資料の片付けを頼んだりしたの?

そんなのタイミングが良すぎる。


お祭りのときだって、私はあのビデオカメラをどこに置いていたかなんて誰にも教えてないのに。

引き出しに、ちゃんとしまっていたのに。


でも陽太は私に差し出してきた。



「なーに、絃ちゃん。すっごい怖い顔してるよ?」


「っ…、陽太、なにか隠してない…?」


「…人には誰しもプライベートがあるって前に言った気がするな」



おじいちゃんが亡くなる数日前から留守をして、亡くなったあとに帰ってきた。


それに何より。


那岐組惨殺事件の資料に、かつての那岐家の集合写真があった。

そこには小さな頃の那岐もいて、那岐の面影のある男の人もいて、たくさんの親族が並んでた。


その中に、眼鏡をかけた1人の少年がいて。

那岐と同い歳くらいで、母親のうしろに隠れているような男の子だった。



「もう終いだ天道。いい加減、終わりにしろ」


「え?」



言葉を発したのは那岐。

きょとんと見つめ返したのは陽太。



「なに考えてんだよお前」


「…なに、って?」


「天道 陽太。
いや、旧姓───…那岐 陽太。」



那岐 陽太(なぎ ひなた)。


その名前に誰もが言葉を失っていた。

お父さんも、雅美さんも、私も。


でも、その眼鏡をかけて母親のうしろに隠れていた5歳くらいの男の子は。


とても陽太にそっくりだった。








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