光を掴んだその先に。
「夜中とかもずっと起きてやってたりして。でも親に見つかると面倒だからって、使われてない物置部屋にパソコン運んで1人でやるのが好きでね」
そんなある夜、事件は起きた。
それは夜中から朝方にかけてだった。
もちろん俺は寝ていたし、そいつは物置部屋にいるわけで。
女の悲鳴、男の叫び声、何発もの銃声、子供の泣き声。
そんなものは今も脳裏を離れない。
「怖くて怖くてずっとそこに身を潜めてたんだよ俺。
少しでも覗いたら殺されちゃうかもしれないから───絃織さんのお父さんに」
そいつは俺を見て嗤った。
復讐をしているのだ、こいつは俺に今。
いや、ずっとこんな計画を小さなときから立てていたのかもしれない。
「まぁそれで、ようやく終わって部屋から出たら、そこはもう血の海。すごかったよねぇ絃織さん」
なんで嗤ってんだよ。
手を叩いて面白いテレビ番組でも見る子供のように嗤ってんだこいつは。
なにも面白いことなんかない。
「でも、そこにいる天鬼のお頭さんに助けられたのはあんただけだったよ。…那岐 絃織。」
低い声だった。
普段の軽いものではなく、能天気なものでもなく。
俺を鋭く見つめるその目は、俺がいつかに桜木へ向けたものと同じだろう。