光を掴んだその先に。
「天鬼 道玄を殺したのは俺だよ」
淡々と言うものだから、理解するに時間がかかった。
雅美は力が抜けたようにその場に腰を落とし、おやっさんはギリッと歯を噛んだ。
「点滴に毒薬を混ぜた。そりゃ苦しむわけだ。でもあっけなかったなぁ…。
天鬼 道玄のことだから死なないかもって、ちょっと思ってたんだけどね」
「てめえ…!!」
「でもさぁ!俺の両親も妹も絃織さんの父親に殺されて苦しんだんだよ!!妹なんて……まだ2歳だった…、」
おやっさんの動きはピタリと止まってしまった。
「2歳、わかる?わかるよね、あんたらなら…、いちばん可愛いときでしょ、」
そう言って俺とおやっさんを見つめた先に、絃がいた。
寝込み襲うとか最悪だよねぇ───と、天道は震える声を抑えて放つ。
そうだ、俺の親は女だとしても子供だとしても誰彼かまわず殺した殺人鬼だ。
「そんな大罪人の息子がさ、幸せな家庭に引き取られて?かわいい赤ちゃんのお世話して?」
そいつはそのあと施設に預けられ、そこでも惨い扱いを受けたと。
俺が絃と出会い、光を手にし、あんなに幸せで怖いくらい幸せに生きていたとき、天道は泣いていた。
わかっている、本来は俺と天道が逆でなければならなかったことくらい。
「ねぇ絃ちゃん、こいつこんな奴だよ?殺人鬼な大罪人の息子のくせに、
赤ん坊の絃ちゃんに自分は良いヤツだーって洗脳したような男だよ?」
絃は顔を伏せたままだった。
なにも答えず、ただ畳の線を眺めて追いかけてを繰り返している。
「───…俺を殺せ、天道」