光を掴んだその先に。
幸せになれるなんて思っていない。
最初からこんな幸せはいつか終わると思っていた。
終わるべきだと、終わらなければいけないと。
那岐 慎二が殺した人間の親族や親友たちはこの世にごまんといるからこそ、俺はそいつらのためにもいずれこうなる日は来ると覚悟していた。
「俺はずっと、このときを待ってたよ絃織さん。あんたが俺にそう言う日を」
「…あぁ、俺もだよ」
俺も、誰かにこの言葉を自ら告げる日が来るときを待っていた。
大罪人の息子という肩書きを貼られ続け、恨まれ続け、その上で誰かに愛されることも誰かを愛することもできると思っていなかった。
でも……お前は。
絃だけは、俺が愛してみたかった。
「絃織ちゃん、やめて、死んじゃだめよ…」
今にも泣き崩れそうな姉さんが花見のときに言っていた言葉を俺は微かに思い出して、その通りだったと納得した。
「馬鹿言ってんじゃねえぞ、絃織…」
「いいんだおやっさん。俺は、ずっとこんな日を望んでたのかもしれない」
あなたに引き取られて俺は幸せだった。
この世にこんなにも優しい人はいるんだと、そして母さんだって。
俺、楽しかったんだ。
「これでやっと終われるね、…絃織さん」
カチャと、拳銃を俺へ突き付ける天道。
「やめて…っ!!剣さん…!早く仲間に連絡を…!!」
「無駄だよ雅美さん。ここから通じるすべての回線は切ってる。
倉庫に向かった連中だって…みんな死ぬよ」
「…どういう…こと…?」
「───あと20分で倉庫は爆破するから」