光を掴んだその先に。




こいつは有能すぎた。

こいつは腕がありすぎる。


ただひとつだけそんな天道に感謝したいことがあるとするならば、俺たちの仇が討てたのはこいつのおかげだということ。

こいつがいなければ、俺は桜木の元へは行けなかったのだから。


恵まれすぎていると思った。


絃にもまた出会えて、かつての仇も討てて。

俺は恵まれすぎていた。



「天道、約束しろ。俺を殺していい…、その代わり天鬼組全員と絃には手を出すな」



きっとこいつなら爆破も阻止できるはずだ。

あと20分あれば余裕だろう。



「あんたらは、…本当に優しすぎるよ」



天道の声は、泣いていた。

そして拳銃は俺から離れたかと思えば。



「絃……!!」


「絃ちゃん…!!」



ずっと黙ったままの少女を引き寄せ、背中から羽交い諦めするように、そのこめかみへ銃口を当てる。


「動いたら撃つから!!」と、天道にしては大きな声だった。



「ふざけんな、俺を殺したいんじゃねえのか天道…!!」


「絃……ッ!!」



俺より前におやっさんが出た。


その瞬間───。


パァンッ!!!と、化薬の匂いに加えてキィィィンと響く耳鳴り。



「ぐッ…!!」


「おやっさん…!!」


「きゃぁぁぁっ!!剣さん…っ!!」



脇腹に1発入った。

それは脅しなんかじゃなかった。


こいつは本気だ。


そして言葉も出ない絃の耳元で、天道は嗤う。



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