光を掴んだその先に。
「それでも那岐は、いつもいつも、ポンポンって背中を叩いてくれて、いちばん辛いのは、苦しいのは那岐なのに…っ、」
ゆっくりゆっくりと、ひとつひとつ伝えてくる。
まるでそれは言葉を話せるようになったばかりの頃を思い出させた。
昔の俺は前しか考えていなかった。
だから俺のうしろを見る絃がそんなものを見ていたのかと。
「私は泣くことしかできなくて、そうすると毎回那岐は慰めてくれて…っ」
違う、それはお前が俺の代わりに泣いてくれていたから。
いつも声を上げて泣いてくれたから。
俺は「ありがとう」って毎回思ってたんだ。
「那岐も、陽太も…っ、こんなに近くで苦しんでたのに…、私は何もできなかった……っ」
やっぱり光だ。
お前は、俺の。
でももし俺の立場が天道だったら、同じようにそいつにとってもお前が唯一の光となっていたことだろう。
俺は昔から欲張りで独占欲が強いから、そうじゃなくて良かったって、やっぱり思ってしまう。
「陽太…っ、私まだ陽太に返してもらってないよ…!」
「…なに、を」
「貸し…っ!貸し1だったじゃんっ…それ、いま返して、」
俺も天道も救おうとしているこいつはきっと、俺の過去なんかとっくに知っていたんだろう。
『私は、…那岐がどんな人でも…どんなものを見てきたとしても……だいすき』
『那岐、…だいすき。私は…那岐が、すき。那岐じゃなきゃ駄目なんだよ』
こいつはそんなもの、知っていたのだ。
俺がずっと怯えていることを感じさせないくらいに言葉を伝えてくれていた。