光を掴んだその先に。
「…なにを返せばいいの絃ちゃん。俺…もう何にもないよ……、返せるものなんかない、」
「あるよ…!!」
すぐに絃は答えた。
祖父を殺され父親を目の前で撃たれ、こうして友達だと思っていた身近な男に裏切られた絃は。
それでも天道に伝えようとしている。
「一緒に、生きて…っ、ここで一緒に生きて…!」
その拳銃を握る力が、ふっと抜けた。
「だって陽太言ったでしょ…っ、来年のお祭り行くって…!
私、楽しみにしてるんだよ、友達とお出かけなんて……、ここに来てからそんなのしてないから…っ」
「…馬鹿、だよ……ほんとに…、」
「そーだよバカだよ…!陽太はそんなバカを友達にしたんなら…、
最後まで責任取ってくれなきゃ駄目じゃん…っ!!」
天道の頬に伝うものは、一筋の哀しみと嬉しさが混じったもの。
そして拳銃を下ろして震える手でパソコンを操作すると、スマホを耳に当てた。
「…作戦失敗。今日で龍牙組は解散」
爆破は解除されて、天道は目元を拭う。
すぐに雅美は病院に連絡をかけ、誰もがゆっくり息を吐いたと思ったとき。
「…絃ちゃん、俺…」
「貸し、増えたよ陽太…。また返してね、絶対に」
「…うん」
そんな会話が静かに繰り広げられる背後。
「おのれ組長の仇……!!!」
「っ…!」
「陽太…!!」
慌てた様子で転がり込むように現れた男は、銃口を天道へ向ける。
それはこの様子を物陰からずっと見ていたのであろう部下の1人。
「ばっかやろ…ッ!!」
天道が絃を庇うように守りに入ったところへ駆け出していたのは俺だった。