光を掴んだその先に。
俺を見つめるおやっさんの瞳はいつだって、俺を大罪人の息子と見ない。
大事な一人娘をいつも俺に預けてくれる。
そして何より───、
「…約束を、守ってくれたから」
「約束…?」
「俺と絃をいつか必ずまた会わせてくれる…って、」
その約束があったから、あのときの言葉があったから、俺は今まで14年間を生きてこれた。
施設の前で小さな2人を抱き締めたあんたはそう言ってくれたんだ。
そんな言葉を信じて良かった。
「それで十分なんだ。…十分なんだよ俺」
「……馬鹿野郎…、」
男はかけられた布団で乱暴に涙を拭う。
少しセンス悪いが何よりもまっすぐな男だ、この人は。
母さんがごく普通の家系の子から、こんな世界の仲間入りをしたとしても。
それでも一緒にいたいほどに惚れた理由が何となく分かる。
だって母さんは最期まで「幸せだった」と言っていたから。
「それでおやっさん。まぁ、こんなときに言うのもどうかと思ったんだが」
「なんだ」
「怒らないで聞いてくれるか」
「だからなんだ。そういうのはさっさと言っちまったほうがラクだろ」
だったら言う。
もう隠すことなんかしたくない。
隠すつもりもなかった。
それに俺は昔と何ひとつとして変わっていないから。